「このエントリーをブックマークしているユーザー」一覧の各項目は引用
これは、
id:sugioさんのエントリー:
betaグループ - 別冊はてな話 - 引用ではない
http://beta.g.hatena.ne.jp/sugio/20051123/p1
への反応です。
以下、願望といえなくもないレベルですが、とりあえず。
では、以下。
まず、
公開ブックマークの価値
ですが、私は、その一覧性(集合)にあると思っています。
つまり、各ユーザのブックマークは、個々のブクマやそのコメントが主たるコンテンツなのではなく、その人が何を選択してきているかという総体および流れこそが最も価値あるコンテンツだと考えています。
また、そこにタグやコメントという情報を付加することで、さらに価値が上がっているとも思っています。
その価値を生み出している主体は、ユーザです。
一方、
ソーシャルブックマークというシステムの価値は何か
という視点で考えると、各ユーザにブックマークしてもらった情報を、いかに有効利用しているか、つまり、どういう切り出し(絞込み/検索)機能があり、どういう見せ方をしているか、という部分ではないでしょうか。つまり、一種のデータベースみたいな感覚です。
はてなブックマークなら、タグクラウド、タグやキーワードやカテゴリで絞り込んだブックマーク一覧、ある日のブックマーク一覧、いわゆる「エントリーページ」(ユーザー一覧含む)、人気エントリーや注目エントリー(過去の特定日の人気/注目一覧含む)、注目ブックマーカー(トップページのアレ)、検索結果でのブックマーク一覧、関連(関連タグやキーワード、カテゴリ)の表示、などなどがシステムとしての価値ということになるんじゃないでしょうか。
そう考えると、
今、論点になっている「このエントリーをブックマークしたユーザー」一覧は、はてなに主体があるコンテンツであり、その一覧の各項目は、各ユーザのブックマーク一覧からの引用として考えてもいいのではないかと思うのです。
ここで、
引用の条件との整合性
を、id:sugioさんのエントリーにあった、引用のための4つの条件を解説している下記のページに沿って考えてみます。
→ 引用について
http://cozylaw.com/copy/wadai/inyou.htm
まず、
1、引用することの必然性
ですが、一覧にするで十分価値があるという視点に立つと、これで、引用の4条件の一つ、必然性はクリアされます。
甘すぎますかね(^^;。でも、私はそう思っています。
もう少し詳しくいうと、各エントリーのブックマークユーザ一覧それ単体では弱いですが、それが今日のブックマーク一覧とそのエントリをブックマークした人の数(x users)や、人気/注目エントリー一覧と連携していることによって、全体の中の位置付けという意味も持ちますから、やはり本当の価値はシステム全体にあるというべきでしょうけど、まあ、個人的にはエントリーページの一覧だけで十分評価しています。
(それが炎上の種であるから云々という議論は、ここでは横に置いておきます)
次に、
2、区分けがはっきりしていること
ですが、はてなブックマークの通称「エントリーページ」には、「このエントリーをブックマークしたユーザー」という見出しもあって綺麗に区分されていますから、十分でしょう。
日付も、ユーザIDも、リンクもありますし。
それから、
3、主従関係にあること
について。
私は、「エントリーページ」の主コンテンツは、
- そのエントリーがブックマークされる価値があったということを示すこと、および
- そのエントリーは何処にあるかという出所元情報(リンク)を提供すること
だと思っています(エントリーページでいうと、前半の部分)。
そして、論点である「このエントリーをブックマークしたユーザー」一覧は、従属コンテンツであるといえると考えています。
また、その一覧は、主要コンテンツの一つであると捕らえてもいいとも思っています。
だれが、何時、そのエントリーをブックマークし、また、どのぐらいの数の人がブックマークしているかという豊富で有益な情報があるわけですから、主コンテンツとしての資格は十分です。
ただ、そう考えた場合でも、それは一覧自体が主要コンテンツなのであって、個々のコメントやブックマーク数という情報は、その一覧の一部でしかないように思えます。
つまり、この一覧は、一覧という表現をとることによってその価値を生み出していて、その一覧の個々の項目は、「従」にあたると考えられると思うのです。
ですから、エントリーページ内における各ユーザのコメントは、どちらにしても「従」です。
さらにいえば、個々のコメントついては、それだけで著作性を持てるほどの価値があるとは思えません。
ユーザのブックマーク全体の流れは一つのコンテンツで、著作性を持ちうるけれども、個々のそれは引用可能な「部分」である、というのが私の解釈です。
最後に、
4、出所の明示
について。
ユーザ一覧の各項目には、ユーザIDが示され、リンクが張られています。それだけを見ると、なんという著作物からの引用なのかが直接明示されているわけではないと考える人もいるかもしれませんが、その一覧が「このエントリーをブックマークしたユーザー」の一覧であるということを考えると(それは一覧の見出しで明らかです)、出所が明示されていると言えるのではないでしょうか。
もちろん、ユーザページのトップへのリンクだけというのは、あまり親切な設計ではありませんが、最低ラインは確保していると思います。
つまり、
公開ブックマークの最小コンテンツは、個々のブックマークではなく、何らかの基準でそれを切り出したブックマークの一覧であるという考えです。
ブログのように個々のエントリーページが独立して存在している場合、そのコンテンツはエントリー単位であると考える方が妥当であると思いますが、ブックマークの場合、個々のブックマーク、および、それについたコメント自体は、単なる一部分であるし、そうあるべきである気がします。
その意味で、個々のブックマークのpermalinkをそのユーザのある特定の日にブックマークした一覧ページ内のアンカー(フラグメント)としている現在の実装は、妥当なものであると感じています。
また、そういう風に考えていくと、「エントリーページ」のブックマークユーザ一覧の各項目にあるコメントは、ブックマーク主体である各ユーザのブックマーク全体というコンテンツから一部を引用したものであり、その一覧自体は、はてなという主体がシステム的に価値を創造しているコンテンツであると考えることができるように思いますが、いかがでしょうか。
実際、「エントリーページ」のブックマークユーザ一覧の現時点での実装を見てみると、各ユーザのブックマークのトップページへのリンクがあり、何時ブックマークされたのかという情報が示されていて、かつ、コメント部分は『』で囲んでいるということから、はてななはこれを引用として扱っているし、引用のルールも守っていると言っちゃってもよいような気がします。
もちろん、それは必要条件を満たしているレベルで、十分であるとは言えないと感じたので、前回のGreasemonkeyのようなものを作ったり、改善を求めてみたりしたわけですが。
まとめると、
- 公開ブックマークにおいては、その一覧が主要コンテンツで、個々のブックマークはその一部と捕らえるべきである。また、その主体はユーザである。
- ソーシャルブックマークというシステムにおいては、ブックマークに付随する情報の切り出し方や見せ方自体が主要コンテンツである。その主体はシステム運用者である。
- はてなブックマークの「このエントリーをブックマークしているユーザ」一覧においては、主体ははてなであり、該当エントリーに関する各ユーザのブックマークコメントを一覧の項目として掲載することは、正当な「引用」の範囲内である。
という感じです。
以上。
以下、余談:個人的には、
この話って「はてなブックマークのエントリーページのコメントは引用か」云々の話じゃなくて、Webはどうあるべきか、という話なのだと思っています。
オープンソースとかブログにの議論にも似ているような気がしますが、プロセスを共有することで相乗効果を生んでいる「Web」という本質的に新しいプラットフォームの上で、各人の創造性を尊重しながらよりよい価値を生み出していくにはどうしたら良いだろうか、という話だと思うのです。
del.icio.usに代表されるソーシャルブックマークというシステムは、そういう視点をもって議論した方が、有意義だと思うんですけどね。Folksonomyや、Wisdom of crowdsというキーワードにもつながる話ですが。
私は、プラットフォームとしてのソーシャルブックマークのポテンシャルをかなり評価しているので、どうすればよりよいシステムが作れるのかという視点の議論をしたいし、読みたい。
たとえば、del.icio.usには炎上が(ほとんど?)なく、はてなブックマークに(というか、日本のWebにより顕著に)炎上が現れるのは何故か、どうしてそうなってしまうのか、というような視点で考えるのも悪くないかもかもしれないと思いました。
# とかいいながら、本音は、正の方向だけじゃつまらないので、清濁併せ呑みつつ、新しい地平を目指して欲しいなと思ってるんですが、あまりのびのびしすぎて反発をくらって廃止とかいうことになってもつまらないし、自分のエントリが炎上したらどうかと考えるとそれを許せるほどできた人間でもないので、ま、そういうことにしておきます。
さらに余談:引用か転載かでいうと、もっと大きな問題点は、
コメントが、自分のコメントなのか、ブックマーク元のエントリーからの抜粋(引用)なのかが不明な所じゃないかなと思っています。
もちろん、リンクがあるのでそれを辿って読めば分かるのですが、それでは不十分だと思います。
たとえば、「エントリーページ」での一覧にそのコメントが引用された場合、そのコメントがあたかもそのユーザの言葉であるように感じられますし、ダイアリーにブックマークのRSSをモジュールとして埋め込んだ時も、概要なのかコメントなのかが分からず、問題です。
ということで、以前もこのダイアリーで書いたのですが、システム的に抜粋(引用)枠を別途用意して対処するのが望ましいのではないかと思います。
それができないならば、せめて、コメント内の抜粋は必ず括弧で括るようにしてくださいというガイドラインを出すべきではないでしょうか。
それから、ダイアリーのRSSモジュールも、概要とコメントは区別すべきです。
もともとのデータとしてdescriptionとcommentは別物なのに、どうして混在させてしまうのか。私には理解できません。
>はてなブックマークへの要望(^^;